「働く」と「生きる」を楽しむためのレシピ

「人生100年」と言われるようになり、生涯現役がもはや当たり前の時代に突入。一人ひとりが「自分らしさ」を見つけ、ワーク&ライフを楽しむためのヒントについて考えていきます。

自分探し②―ネガティブな経験だって宝―

今日の材料:自分探し、ネガティブな経験、学ぶ力、行動

日常生活の中にこそ自分が誇れるものが見出される、と書いたのが前回の記事

さらに言えば、むしろ話したくないような失敗や後悔など、ネガティブな経験の中からだって、意味ある発見が出来ます

言い方を変えると、そういう経験から学ぶことが出来る力こそ、人に誇れるものではないでしょうか。

ふと周りを見回してみてください。

自分自身のネガティブな経験に正面から向き合える人、取り繕ったり自虐的になったりせず、それを学びに変えて話すことが出来る人がいたら、とても尊敬できると思いませんか。

とはいえ、ネガティブな経験と向き合うのは、誰にとっても楽しいことではありません。そんな時は、インプット行動ではなく、アウトプット行動がおススメです。

具体的に言えば、ネットや本などの外部情報を読み漁って自分の経験の良し悪しを分析するのではなく、その経験について話したり、文章に書き出すことです。

そうやってアウトプットすることで、その経験を一度自分の心の中から外に出してみてください。

経験に違う風を当てることは、今まで見えなかった側面を見つけることにつながります。前回、前々回と、「あなたの歴史は、それを思い出す今のあなたが創っている」と書きましたが、違う人が見れば、もしくは経験から時を経た今のあなたが見れば、全く異なる側面が見えてくるかもしれません。

例えその時は何も見えなかったとしても、そうやって考えたことはきっと次の何かの経験に活かされることでしょう。考える続けることで初めて、出来事や経験は宝になるんだと思います。

最近、身近な人が転職をしました。教授推薦で入った会社に新卒から20年以上勤めて転職経験はゼロ。そんな彼が40代で予期せぬ転職をすることになった時、とてもじゃないけど前向きにはとらえられなかったようでした。それでも自分の経歴の棚卸しをしてキャリアを見つめ直し、自分や家族の将来を考える中で、少しずつ変わっていったのです。

そして面接の時がきました。自分の強みと弱みを話してください、という「質問あるある」に対して、職歴20年以上の彼は職業上の強みの後に、こんな弱みを話しました。

「私は今回の転職活動を通して、今までの人生でとことん自分に向き合ったことがなかったということに初めて気づきました。これからの生き方を考える上で、この経験はとても貴重なものだったと感じています。」

その経験がネガティブなのかポジティブなのか―それはあなたの行動次第です。

自分探しーありきたりな出来事こそが宝ー

今日の材料:自分探し、ありきたりな出来事、自分らしさ

前回の記事では、「自分の今の立ち位置を知るために自伝を書く」ということを話題にしましたが、それは自己PRとはチガウ、とも書きました。

でも、こういう作業はやっぱり、自分が誇れることを見つけ出すことにもつながると思うのです。

過去に若者就労支援の仕事をしていた時、あるキャリアカウンセラーの方がとても面白い話をしていました。

その方は以前、大手企業の人事部に勤めていて、毎年大勢の新卒社員の面接を行っていました。そこで「大学生活の中でどんなことが記憶に残っていますか」と質問すると、「ホノルルマラソンに参加したことです!」と答える人が毎年少なからずいる、というのです。

あまりにみんなが同じように話すので、ホノルルマラソンにはきっと日本の大学4年生がたくさん参加しているんだろうな、と思ったとか。

でもこのカウンセラーの方ご自身は、学生が話してくれたエピソードの中で記憶に残っているのは、「親友と喧嘩した後、どうやって仲直りしたか」という話だったといいます。

ごくありきたりな、日常の出来事。でもその経験を通して考えたこと、学んだこととこそが、今の自分の在り方に大きく影響している、と切々と語ってくれたことが、今でも忘れられないとおっしゃっていました。

あなたの歴史は、それを思い出す今のあなたが創っているものです。

前回の記事でそう書きました。そして今の自分に真剣に向き合った時、そこに影響する出来事は日常の、身近な人との関係性の中にこそ、存在するのかもしれません。

これも前回の記事で書きましたが、歴史の教科書に載っている出来事は、不特定多数の人に興味あるものを選別しています。でもあなたの歴史は、今のあなたを知るための歴史は、あなた自身にとって意味ある出来事によって創られるのです。

それを見つけるために真剣に考えて得られた答えだからこそ、聴く人の心に響くエピソードになるんだと思うのです。

「どこで、何をしたか」より、そこで「どう考えたか」の方がずっと大事です。

日本人は自分をアピールすることが苦手、とよく言われます。その一つには、誰かと比較したり、その結果として人より秀でている特別な自分を誇示しなければならない、と考えてしまうからかもしれません。

でも、一人ひとりが持つ魅力は他の人と同じでなくて良いのでは。いろんな魅力を持った人が活躍できる場がどんどん増えて行ったら、世の中は今よりもっと素敵になるはずです。

特別な自分ではなく、自分だけにしかない魅力を探すために、日常に目を向けてみてください。

自分史を書いてみませんか。

今日の材料:自分史、過去、記憶、ストーリー

自分史を書いてみませんか。

自分のこれまでの人生の出来事を、記憶をたどりながら書き出してみてはいかがでしょう。

何それ?履歴書?それとも自己PR?―いえいえ、何も調べなくても、深く考えなくてもいいんです。ただ、あなたが生きてきた中で思い出せる鮮明な出来事を、文字にしてみるというだけです。

だってその目的は誰かにアピールすることではなく、今の自分自身の立ち位置を確認することですから。

「過去」の出来事を書き出すことで、どうして「今」の自分を見出すことになるのでしょう。

みなさんは「歴史」と言われたら何を想像しますか。多くの人は、教科書の中に整然と年表にまとめられているものを挙げるでしょう。でもその「歴史」は、過去に起こったすべての出来事を網羅しているわけではありません。

その国、その時代を代表する大切な出来事を選別して、わかりやすくまとめているのです。基準を作っているのは、歴史学者でしょうか。でも、教科書論争が頻繁に起こるように、それは製作者や関係者の価値観の中で揺れ動きます。つまり、歴史はそこに「ある」のではなく、人が「創っている」ものなんです。

そう、あなたの歴史は、それを思い出す今のあなたが創っているものです。どのような場面で、誰が、何を話したり、行動したりしたのかを思い出すこと-そこには、今のあなたの考え方が反映されているんです。

さあ、もし複数の出来事を書き出すことが出来たら、それをつなげて一つのストーリーを作ってみてください。そのストーリーの筋書きの中に、あなた自身も意識しなかった大切なことが見つかるかもしれません

そしてもう一つ、あなたのストーリーは決してあなたの中だけで作られるものではありません。他の人との関わりの中で出来上がって行くのです。

もし可能なら、あなたのストーリーを身近な大切な人に話してみてください。

その人との関係性の中にも新たな発見が見つかるかもしれません。